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経済産業省が健康経営を推進するのはなぜ?注目されている理由や、これからの課題について解説


健康経営の推進

経済産業省は、労働人口を確保し、医療費・介護保険給付費を削減するために健康経営を推進・取り組みをおこなっています。

じつは健康経営の推進は、全ての人々に健康と福祉を提供し、ジェンダー平等の社会を作り上げるといったSDGsの目標達成にもつながっていく戦略のひとつでもあるのです。

社員の健康増進と企業の業績向上のために、健康経営の制度である健康経営銘柄や健康経営優良法人制度における認定を目指していきましょう。



経済産業省が推進する健康経営とは?


経済産業省が推進する"健康経営"とは、どのような戦略を具体的に指すのか紐解いてみましょう。経済産業省がヘルスケア産業施策を解説するホームページでは「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とまとめています。

健康経営を推進すると、従業員が健康的に生活しやすくなる効果が、海外や国内で先駆けて導入した企業で実証されています。

たとえば、就業時間内の禁煙を規則化し、全社敷地内の喫煙所を撤去すると、従業員の健康管理へのサポートにつながっていきます。さらに、従業員の健康管理ができれば、従業員自身の活力・生産性が向上し、企業の業績アップが期待できるでしょう。

健康経営は従業員の心身の健康を守り、組織の経営安定化・収益アップにつながる経営の指針なのです。



経済産業省が健康経営を推進するのはなぜ?


経済産業省が健康経営を推進する大きな理由のうちひとつは、労働人口を確保し、医療費・介護保険給付費を削減するためです。2015年時点で日本は世界201カ国のうち、高齢化率が最も高い国となり、働ける世代の人口が減少し始めました。

人手不足が加速すると、従業員一人ひとりの労働負担が増え、心身の不調を招き、休職・離職する方の増加が予測されます。さらに心身に影響を受けると、治療に専念する方が増え、国民医療費・介護保険給付が増加し、国の財政が圧迫されるでしょう。

そこで国を挙げて健康経営を推進し、医療費・介護保険給付の削減、財政の安定化につなげていく戦略が打ち出されたのです。



健康経営の歴史的背景と日本の健康経営の歩み


健康経営の起源はアメリカです。日本では2000年代に入って生産年齢人口の減少が社会情勢として問題視され、2013年より本格的な導入に至ります。現在、健康経営の戦略は経済産業省の主導により推進されていますが、ここに至るまでどのような変遷をたどりながら普及していったのでしょうか。詳しく時代の流れとともに見ていきましょう。


<日本での健康経営波及の流れ>

  • 【1992年】健康経営の概念をアメリカの経営学者が提唱

  • 【2006年】NPO法人健康経営研究会が発足

  • 【2013年】日本再興戦略

  • 【2017年】未来投資戦略

  • 【2019年】成長戦略

【1992年】健康経営の概念を生み出したアメリカの社会背景

健康経営は、1992年に経営学者のロバート・H・ローゼン博士(Robert H.Rosen)が自著『The Healthy Company』で提唱し、始まったとされています。

ロバート博士は、当時医療費が高騰していたアメリカにおいて、従業員の健康を確保できれば、収益性の高い会社が維持できると唱えました。

医療費を支払う"疾病モデル"から、人の健康管理に投資する"生産モデル"への転換により、それまで別々に考えられてきた経営管理と健康管理の統合の考え方を、世界で初めて提案したのです。

アメリカでは公的医療保険がなく、従業員の医療費負担高騰から経営を圧迫する事態が問題になっていたため、博士の考えは1990年代に企業へ広がっていきました。


【2006年以前】健康経営導入以前の日本の労働者の健康管理への取り組み

労働者の健康管理について、日本で何も取り組んでこなかったわけではありません。

1972年に「労働安全衛生法」が施行され、労働災害の防止と責任体制が明確化されました。

そのうえで快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康の確保が企業に求められるようになったのです。

また、生活習慣病が急増した1980年代には、1988年厚生省(現・厚生労働省)が「トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)」を開始。健康運動指導士、産業医、看護師、心理相談員などを社内に配置する企業に対して国が助成金を出し、健康指導の実施などに取り組み始めました。

さらに2015年には50人以上の労働者を抱える企業に「ストレスチェック制度」が義務化され、従業員の身体とメンタル面の健康管理が課せられるようになりました。

このように、健康経営の根底の指針は、最近取り入れたばかりの新しい戦略ではなく、時代の流れとともに日本でも形を変えて歩んできた考え方なのです。


日本における健康経営にたどり着くまでのあゆみについて、より具体的に知りたい方はこちらの記事もご覧ください。


関連記事:多くの経営者の健康を支えてきたトレーナーの先駆者が説く「健康経営は“トップの意識改革”から」


【2006年】NPO法人健康経営研究会の発足により健康経営が定義される

2000年代の日本では、生産年齢人口の減少が顕著になり、精神的な不調による休職・離職者の増加が問題視され始めました。

日本は、従業員に長く働いてもらえる環境作りをするため、2006年にNPO法人健康経営研究会が発足します。

アメリカのヘルシーカンパニーを「健康経営」と定義し、「経営戦略において、人という資源を資本化して企業を成長させること」を第一の戦略としました。


【2013年】日本再興戦略により「健康経営銘柄」「健康経営優良法人認定制度」開始

2013年、第2次安倍内閣によって産業競争力の向上を目的とする、日本再興戦略が閣議決定されます。数ある戦略のうち、健康経営はグローバル市場への進出が期待できる分野「国民の健康寿命の延伸」によりグローバル市場への進出が期待できる分野の取り組みのひとつとして位置づけられました。

翌年には経済産業省が東京証券取引所の上場企業から、とくに優れた健康経営をおこなう企業を「健康経営銘柄」として選定する制度がスタートします。

2016年には、上場企業の枠を外した「健康経営優良法人認定制度」が開始され、大企業・中小企業を対象として、多くの企業が認定されていったのです。


【2017年】未来投資戦略により顕彰制度の選定基準の見直しを図る

2017年、第3次安倍第2次改造内閣により、IoT・ビッグデータ・人工知能などを産業や生活に取り入れ、さまざまな社会問題を解決するソサエティー5.0社会の実現を目指す未来投資戦略が閣議決定されます。

そのうち、ソサエティー5.0の実現に向けた戦略分野のひとつとして「健康寿命の延伸」が再度取り上げられました。

健康経営銘柄や健康経営優良法人の顕彰制度の選定基準の見直しを図り、従業員のための健康づくりの強化がなされていったのです。


【2019年】成長戦略により取り組みの質向上を意図した指針見直しが進む

2019年にスタートした成長戦略を皮切りに、健康経営への取り組みの質向上を目的とした指針の見直しがおこなわれ、保険者と企業による連携がスタートします。

2020年には健康経営への投資を可視化する「健康投資管理会計ガイドライン」が発足され、健康経営の成果が投資家から適切に評価される環境が整備されました。



経済産業省が取り組む健康経営とSDGsとの関係性


SDGs(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」を意味します。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すために、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された国際目標です。

地球上の誰一人取り残さない」誓いのもと、17のゴールと169のターゲットで構成されています。そのうち健康経営の目的は、目標3・5・7の達成に向けた取り組みと方向性を同じくしています。

SDGsの目標達成は健康経営を通じ、全ての人々に健康と福祉を提供し、ジェンダー平等の社会を作り上げ、地球環境に配慮したものづくりに向けて動いているのです。


<SDGs17の目標>

  • 目標1:貧困をなくそう

  • 目標2:飢餓をゼロに

  • 目標3:すべての人に健康と福祉を

  • 目標4:質の高い教育をみんなに

  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう

  • 目標6:安全な水とトイレを世界中に

  • 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

  • 目標8:働きがいと経済成長も

  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

  • 目標10:人や国の不平等をなくそう

  • 目標11:住み続けられるまちづくりを

  • 目標12:つくる責任 つかう責任

  • 目標13:気候変動に具体的な対策を

  • 目標14:海の豊かさを守ろう

  • 目標15:陸の豊かさも守ろう

  • 目標16:平和と公正をすべての人に

  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう


参照:SDGs17の目標/公益財団法人日本ユニセフ協会



経済産業省が推進する健康経営への取り組み


健康経営の推進は現在、経済産業省により主導されています。

経済産業省は健康経営を推進するための取り組みとして、全部で5つの健康経営顕彰制度を設けました。

顕彰制度により健康経営に真摯に取り組んでいる企業が「見える化」され、健康経営は利益やメリットが多い取り組みだと分かりやすく認識できるのです。


健康経営顕彰制度の種類と適用条件を知り、自企業がどの部門で認定できるか検討してみてください。


<主な健康経営顕彰制度>

  • 健康経営銘柄

  • 健康経営優良法人(大規模法人部門)

  • ホワイト500

  • 健康経営優良法人(中小規模法人部門)

  • ブライト500

健康経営銘柄

健康経営銘柄とは、長期的に企業価値の上昇が期待できる企業を投資家に紹介し、健康経営の促進を促すための制度です。

東京証券取引所が経済産業省と共同で選定しており、投資家にとって魅力的か否かを判断するために、認定条件は厳しくなっています。


健康経営優良法人(大規模法人部門)

健康経営優良法人(大規模法人部門)とは、地域の健康課題や健康増進の取り組みをもとに、とくに優良な健康経営を実践している大企業を顕彰する制度です。認定には、経済産業省が定める大規模法人部門の、5つの大項目の要件を満たす必要があります。


ホワイト500

大規模法人部門で健康経営優良法人として認定された中で、健康経営度調査結果の上位500法人のみをホワイト500として認定しています。


健康経営優良法人(中小規模法人部門)

健康経営優良法人(中小規模法人部門)とは、地域の健康課題や健康増進の取り組みをもとに、とくに優良な健康経営を実践している中小企業を顕彰する制度です。


ブライト500

中小規模法人部門で健康経営優良法人として認定された中で、健康経営度調査結果の上位500法人のみをブライト500として認定しています。



現在の日本の企業の健康経営の導入の進捗状況から企業に求められるもの 


帝国データバンクが2023年9月に健康経営に取り組んでいる企業数を調査したところ、全体では56.9%、内訳として大企業は72.4%、中小企業は54.1%と、半数以上の企業が従業員の健康管理について何らかの対応策を行っていると分かりました。

また、経済産業省が発表した「健康経営優良法人2024」の認定法人のうち、大規模法人部門は2988法人、中小規模法人部門は1万6733法人で、昨年度の健康経営優良法人2023認定数(大規模法人部門2676法人、中小規模法人部門1万4012法人)に対し、両部門共に大幅に増加しています。


実は、健康経営優良法人の認定を担う日本健康会議が定めていた目標「2025年までに保険者とともに健康経営に取り組む企業等を10万社以上とする。」は、すでに達成されているのです。


また、さまざまな調査によって、健康経営によって企業業績や株価は上昇傾向にあり、取り組みをおこなう企業における離職率は低い傾向にあるとの結果も報告されています。

今後、企業における健康経営では「健康経営の効果の可視化」が求められるでしょう。企業の健康経営担当者が、社内外の関係者に対し、健康経営の効果をアピールできれば、より企業の価値は高まっていくはずです。

健康経営に積極的に取り組み、効果に関する指標との相関分析をおこなうことが、今後はより重要になってくるでしょう。


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