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健康経営とは?メリット・デメリット・取り組み方や認定制度・健康経営の事例をわかりやすく解説


健康経営会議の様子


健康経営とは、従業員の健康管理を徹底し、企業が抱える問題を解決するための経営です。健康経営に取り組むと、従業員の健康状態が改善し、生産性が向上したり、離職率が低下したりします。

一方で、健康経営に取り組む際には情報収集や効果の測定のために多くの時間を要します。取り組み方の手順や成果を出している企業の事例を確認し、長期的なスパンで取り組んでいきましょう。



健康経営とは?具体的にはどんな目的で、何をするのか


健康経営とは、企業が従業員の健康管理に関する課題を経営的な視点で捉え、健康課題の解決に向けて取り組むことです。健康経営が日本で注目され始めた背景には、少子化による生産年齢人口の減少と、人手不足が関係しています。


健康経営で深刻な未来の人手不足に備える

たとえば、日本の生産年齢人口は1995年時点で約8700万人でしたが、20年後の2015年では約7700万人にまで減少しています。

生産年齢人口の減少は今後もますます加速すると言われており、2030年には日本全国で644万人の労働者が不足すると言われているのです。

人手不足になると労働環境が悪化し、心身の健康に影響が出て、会社が存続できなくなるおそれがあります。

そこで従業員・会社を守るために健康経営を推進し、従業員が心身ともに健康的に生活できるサポートをする必要があるのです。


会社と従業員の双方に健康経営はメリットをもたらす

なぜ健康経営が必要なのか。それは健康経営に沿ったビジネスが「健康投資」になり、従業員・会社それぞれに利益を生むからです。

現在、厚生労働省や経済産業省が中心となり、全国の企業に対して健康経営の啓蒙を積極的におこなっています。

経済産業のおもな役割は、健康経営に関わる顕彰制度を策定し、認定基準の設立や承認をおこなうことです。

一方で、厚生労働省は、健康経営を推進するためにさまざまな情報発信をおこなう役割があります。



健康経営をおこなう企業の目的と、獲得できるさまざまなメリット


健康経営をおこなう企業は、以下に挙げた4つの主なメリットを得る目的で積極的に活動を継続しています。

これから健康経営の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。


  • 生産性が向上する

  • 採用活動を強化できる

  • 人材が定着する

  • 各種インセンティブが獲得できる


【1】生産性が向上する

健康経営を推進すると、従業員の健康状態が良くなり、生産性が向上します。もし、メンタル不調や病気によって従業員が長期休暇をとっている職場の場合、他の従業員の業務負担が増えます。

そのため、他の従業員が体調を崩したり、離職したりするケースは、増える可能性があるのです。

一方で、メンタルや身体の健康状態が維持できていれば、従業員の業務負担が増える可能性はありません。また、仕事のパフォーマンスが上がるため、会社の業績アップにもつながるでしょう。


【2】採用活動を強化できる

健康経営に積極的に取り組むと「従業員を大事にしている企業」というイメージが社内外に発信でき、休職者を募集しやすくなります。

求職者の数が多くなれば、より良い人材を発見できる可能性が高くなるでしょう。また、健康経営に取り組んでいない企業と差別化ができるため、競合力のアップも期待できます。


【3】人材が定着する

健康経営により、従業員の健康状態が良くなり、人材が定着しやすくなります。

ワークライフバランスを考えた取り組みを展開し、メンタルヘルスなどの病気の対策ができれば、離職率の低下も防止できるでしょう。


【4】各種インセンティブが獲得できる

健康経営に取り組む優良な企業を認定・顕彰する健康経営優良法人などに認定されれば、以下のインセンティブを得られる場合があります。

  • 保険会社による保険料割引

  • 自治体・金融機関による金利優遇

  • 公共調達・公共事業の入札時における加点制度

  • 各自治体のホームページや広報誌での企業名の掲載

  • 健康経営優良法人などの認定ロゴマークの使用許可



健康経営導入で生じるかもしれない、いくつかのデメリット


健康経営についてよく理解できないまま導入した場合、以下のデメリットが生じる場合もあります。健康経営を取り入れる前に、以下に挙げる主なデメリット・リスクを把握し、対策しておきましょう。


  • 効果が把握しにくく時間がかかる

  • 健康課題を見つけるために時間を要す

  • 施策によっては従業員から不満が出る


効果が把握しにくく時間もかかる

たとえば、離職率や欠勤率が下がったとしても、健康経営による効果なのかが判別しにくいのです。

判別するためには、長期的なスパンで効果測定をしなければなりません。半年単位や年単位で長期間にわたり取り組んでいく必要があります。


健康課題を見つけるために時間を要す

自社の健康課題を見つけるためには、産業医との個別面談や定期健康診断、社内アンケートやメンタルチェックの結果を確認する必要があります。そのため、相当量の時間が必要になります。


施策によっては従業員から不満が出る

たとえば、社内の喫煙者の数を減らすために「社内の喫煙所を撤廃する」という施策を展開した場合、喫煙者の社員から不満が出る可能性もあります。

健康経営の施策をおこなう際は、従業員に施策のメリットをしっかり伝えておく必要があります。



健康経営の導入方法と、取り組み方


健康経営の導入から社内における取り組みまでの流れについて解説します。

まずは社内・社外の担当者と連携し、健康経営のための組織を整えます。その後、健康課題を解決できる施策を展開しましょう。

もし、効果が得られなかった場合は健康経営戦略マップを活用し、問題点を再度見直して次の戦略を立てる必要があります。


  1. 加入している保険者へ相談する

  2. 健康経営宣言する

  3. 組織体制を整える

  4. 健康課題を把握する

  5. 施策を実行する

  6. 健康経営の評価・改善をおこなう


1.加入している保険者へ相談する

自社が加入している健康保険組合や協会けんぽの窓口に相談し、健康経営を始めたい旨を伝えましょう。

窓口には健康経営に関する知識を持った専門の職員がいるため、専門的なアドバイスがもらえます。

将来的に健康経営優良法人や健康宣言事業への参加を検討している場合は、その旨も伝えておくとよいです。


2.健康経営宣言する

健康経営宣言とは、経営者が従業員・その家族の健康管理を経営課題とし、組織全体で取り組む意志を明文化して表明する宣言です。

宣言する際は、会社のホームページ上に専用ページを作り、大々的に発信するのがよいでしょう。


3.組織体制を整える

健康経営宣言を終えたら、健康経営を推進するための担当者を決めましょう。たとえば、定期健康診断に関係している従業員やリーダーシップのある幹部から選定するとよいです。

専任者を複数選んだら、実務担当者や統括者を決める必要があります。


4.健康課題を把握する

組織体制が整ったら、自社が抱える健康課題を把握するために、従業員に関する以下の内容を確認しましょう。


  • ストレスチェック

  • 残業時間・有給休暇の取得状況

  • 定期健康診断の受診率

  • 運動状況

  • 食生活

  • 喫煙率


5.施策を実行する

健康課題が把握できたら、優先順位を決め、具体的な健康経営の取り組みを決めましょう。たとえば「2025年◯月までに社内の喫煙率を◯◯%まで引き下げる」のように、いつまでに何をやるか、定量的な数字を用いて決める必要があります。


6.健康経営の評価・改善をおこなう

健康経営の取り組みが終了したら、従業員の健康状態が改善されているかを確認しましょう。

従業員の満足度や仕事に対するモチベーション、生活習慣の改善具合を確認し、成果が得られているかを確認する必要があります。

成果が得られていない場合は、健康経営戦略マップを活用し、次の取り組みを考えましょう。健康経営戦略マップとは、自社の健康課題や解決方法を可視化するための方針書です。PDCAサイクルを回すために役に立つマップですので、積極的に活用しましょう。



健康経営優良法人に認定されるために


健康経営優良法人とは、健康経営に取り組む優良な大企業・中小企業・その他法人を指します。経済産業省・日本健康会議が中心となって運営する公的制度『健康経営優良法人認定制度』に申請し、認定された企業です。


健康経営優良法人に認定されるメリット

健康経営優良法人に認定されると、"従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人"として社会的な評価を受けられます。

さらに自治体や金融機関において、さまざまなインセンティブが取得できるのです。

健康経営優良法人には、大企業を対象とした大規模法人部門と、中小企業を対象とした中小規模法人の2種類があります。


ホワイト500とブライト500

健康経営優良法人における大規模法人部門の上位500をホワイト500、中小規模法人部門の上位500をブライト500と呼んでいます。


【参照例】2024年度の健康経営優良法人の認定要件

健康経営優良法人の認定要件は以下のとおりです。既に認定されている企業は継続を目指して取り組みましょう。

※中小規模法人・大規模法人の判定について、詳しくはこちらをご確認ください。

関連記事:中小企業者の判定等フロー:国税庁


中小企業向けの認定要件
健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定要件

大企業向けの認定要件
健康経営銘柄2024選定基準及び健康経営優良法人2024(大企業法人部門)認定要件


健康経営銘柄とは


健康経営銘柄とは、東京証券取引所に登録されている上場企業の中で、とりわけ秀でた健康経営に取り組んでいる企業に付与される顕彰制度です。

企業価値の向上に重きを置く投資家に対し、魅力的な企業を紹介し、企業による健康経営の取り組みを促進する目的があります。

健康経営銘柄の選定のために、経済産業省と東京証券取引所が「健康経営調査」を実施し、分析・評価します。

健康経営銘柄への認定のために健康経営を継続すると、従業員の健康状態の改善や、生産性の向上が期待できるでしょう。また、企業の業績アップや、株価向上も期待できます。



健康経営事例紹介


健康経営の事例として、大企業編・中小企業編・ユニーク編の3つに分けてご紹介します。今後の取り組みを決めるための参考にしてみてください。


【大企業編】イオングループの取り組み事例

イオングループであるイオン株式会社・イオンリテール株式会社は、2017年から6年連続で健康法人優良認定制度のホワイト500に選ばれています。

健康経営の取り組みとして「健康チャレンジキャンペーン」と銘打ち、従業員が利用できる健康に関するさまざまなコースを用意しています。また、従業員への健康的なアドバイスを提供するポータルサイトも整えているのが特徴です。

取り組みにより、従業員の意識が変わり、ヘルスケア関連のコミュニティが作られるといった効果が出ています。


【中小企業編】静岡部品株式会社の取り組み事例

静岡部品株式会社は2021年より3年連続でブライト500に選ばれている、静岡県富士宮市の工業ロボットや自動車部品などの開発製造を行う企業です。

もともと、若年層に対して血液検査をしていませんでした。2015 年に若い従業員が病気になり、復職ができず、「何かできることがあったのでは」と考えたのをきっかけに、健康経営に取り組み始めました。

当初は「治療・再発予防」が取り組みの中心でしたが、徐々に予防を重視した取り組みにシフト。ヘルシー弁当の提供のほか、静岡県との連携で血圧測定習慣化促進事業を開始しました。血圧リスクを見える化し、傷病日数が2018年の682日から2022年には129日まで減少する効果を上げています。


【ユニーク編】トキタ種苗株式会社の取り組み事例

トキタ種苗株式会社は埼玉県内 県内有数の老舗企業。2017年の創業100周年を機に本社オフィスをリニューアルし、同時に敷地内の全面禁煙を実施。さらに、チームで食生活を改善して健康意識を改革する取り組みをはじめました。

年代や部署の違う社員を5~6人ずつのチームに分け、月一回、健康や食について考える場を設けています。また日頃の野菜の摂取量が分かる「ベジメータ」を導入。緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロチンなどカロテノイドの血中濃度の計測を開始しました。

この取り組みにより、チーム戦を実施したところ、社内の平均数値が上がりました。日本人

の平均値は343とされるが、1000を超える社員も出たそうです。



健康経営に取り組む際は健康経営優良法人の認定企業を参考にしよう


健康経営に取り組む際は、健康経営優良法人の認定企業の事例を参考にしましょう。参考にする際は、自社と同規模の企業の事例を確認することをおすすめします。

同規模の企業がどのような健康課題を抱え、いかに解決し、成果を上げていったのか。一連の流れを知り、自社で活かせる点をピックアップするとよいです。

2024年の健康経営優良法人の認定企業の一覧を確認する際は、以下サイトを活用してください。


参照:健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」



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